8月31日
昔々その昔
8月31日のお昼過ぎ
東京の片隅の商店街の裏通り
板塀に囲まれた家の居間でごろごろしていた。
風が気持ちよく
ヒンヤリとする畳の感触をよく覚えている。
隣の部屋では
父と母と兄が必死の形相で
ワタシの夏休みの宿題と格闘していた。
その父も母も兄も彼岸の住人となり
あの小さな家も今はない。
いつだったか夫に家に帰りたいと言ったとき
貴女の帰る家はもうないでしょ
と返され、愕然とした。
先日やってきた保育園や幼稚園(ワタシは両方通ったのだ)のころの
友人たちと会ったとき
ワタシの故郷は昭和30年代から40年代前半の淡島通りだわ
と、言ったら
友人たちは感慨深い面持ちで頷いていた。
暑い8月が去っていく。
けれど
夕方、小次郎との散歩のときの風に
咲き始めた葛の花は幽かに揺れていた。
その風に吹かれつつ、
8月にバイバイ